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コチラは黒だけど真っ黒ではない靴をと言う事で製作させてもらった靴です。

「この靴何色?」

その答えに「黒。」と返ってくるけど、よくよく見ると返答に困る色と言うのがこの靴です。

それに良く似たのが万年筆の黒。確かに黒だけど、マジックの黒ではなく、万年筆特有のブルーブラックと言う色がありますが、そのなイメージです。

インクの濃淡が万年筆独特の味わいですが、この靴も同じで要所に色をしっかりと入れて濃淡をつけ味わい深い仕上がりとなりました。
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ベースになっているのが、コチラ手前のブルーブラックのマットな革です。対して奥が一般的な黒い靴に使われるボックスカーフです。
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では、黒い靴と並べてご覧下さい。

ここで黒くない黒い靴だと言う事が御わかり頂けたかと思います。

正統派の真っ黒い靴にはそれなりの良さがありますが、真っ黒では少し退屈だと言う方はブルーブラック如何ですか?マスキュリンな真っ黒に対してフェミニンなブルーブラック。色っぽいですよ。
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革を木型に沿わせて、革に靴の形を覚えさせる作業を釣りこみと言います。

縫い上がったアッパーをいきなり釣り込んで行く事が多いのですが、時々そうは行かない場合がございます。

それは、デザイン的に革にかなりのテンションを加えて釣り込む必要がある場合、または革自体の強度があっても引っぱりに弱い(裂けやすい)場合です。

デザイン的に革にかなりのテンションをかける必要がある靴としては、ホールカットやセンターシームの無いジョッパーブーツ等です。ジョッパーブーツ等は、アッパーを縫う前に甲の部分の立ち上がりのクセ付けをするクリピングと言う作業等がなされます。

そして、素材的に引っ張りに弱い物として、最もわかりやすい例がコードバンです。昔の職人さんは焼酎を口に含み、革に吹きかけて、裂けな様にふやかせながら作業していたと言う話を聞いた事が有ります。

そして、現在製作中の靴も同じで、霧吹きで水分を与えながら無理な力を加えずに木型に革を沿わせています。今はまだ芯が入っておらず、釣りこみ前の釣りこみ、プレラスティングです。

一晩このまま置いておいて、革がある程度木型の形を覚えたら、本釣りに入ります。この一手間で、靴にし難い革でも、デザインでも、靴にする事ができます。



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先日御紹介させて頂きましたノルウィージャンウェルテッド製法のブーツですが、完成致しました。
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L字に立ち上がったウェルト上に見えるスクイ縫いとそれに絡げた麻糸が特徴的な製法です。
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底はミッドソールを挟んだリッジウィソールで、ウェルトと合わさり非常にボリューミーでグリップ力も十分です。
ご注文頂いた方が、北陸にお住まいの御客様で雪を見越した作りとなっております。
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ですので、ベロも雪が侵入し無い様に、昔のスキー靴やスノーブーツ等と同じ袋ベロになっております。また、革も水の浸透が遅いシボ革を選択されました。
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そして、アクセントでモカ縫いはスキンステッチと言う非常に洒落た雪の日対応のブーツになりました。

勿論、今日のハイテク素材が使われ、靴底に縫い目の無い、何ならアッパーにも縫い目の無いブーツの方が幾分機能的かとは思いますが、そのような素材も無かった昔の職人の知恵から生まれた作りのブーツを敢えて今日履くのは非常にお洒落だと思います。

快適装備が沢山ついた車がある今日、クーラーもついていないクラシックカーを敢えて選び、三角窓を開けて、自然の風を思いっきりを受けながら、少し日が暮れて涼しくなった時間帯にドライブする感覚に近いかと思います。

好きな人は、こういうのがとことん好きなんです。因に私もその口なんです。
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ウェルトを介したノルウィージャン製法でブーツを製作中です。
先ずは、ウェルトを作る所からです。

コチラは切り出されたショルダー(牛の方の部位)です。柔らかさがノルウィージャンウェルテッド製法に適しています。
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この製法の靴の場合、素上げ(色を入れない仕上げ)も良く目にしますが、今回は色を入れます。
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そして、加工しやすく水につけて革をふやけさせます。
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ウェルトがふやけたところで、適した厚みに漉きます。アッパー側面からコバ断面にかけてなだらかな傾斜がかかる様な漉き方にしています。
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漉きを終えたウェルトの裏に浅い溝を掘り、そこを折り目にするとウェルトをLに立ち上げる事ができます。
これで、ウェルトは完成です。
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出来上がったウェルトを麻糸ですくい縫っていけば良いのですが、ここでこの製法ならではの麻糸の絡げ縫いが入ります。
絡げる糸は、靴のサイズ、デザイン、底付けの雰囲気に合わせて、糸の太さを調整しますが、今回はスクイ糸よりも若干細めの麻糸を選択しました。
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そして、縫い上がりがコチラです。ノルウィージャンウェルテッドならではのコバの雰囲気が出て来ました。
完成はまた追ってご紹介致します。

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兎に角真っ黒な靴が完成致しました。黒いだけでは少し味気無い気もしますが、少し個性的なダイヤモンドキャプが良い味付けになったのではないでしょうか。
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勿論、靴の中も真っ黒です。
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靴底も真っ黒の全カラス仕上げですが、お腹の部分にのみ蝋を入れて磨き上げた、全カラスの半カラス仕様です。

黒光る中にイニシャルネイルのアクセントを効かせています。
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ヒール部には縫い目がなく、丸く奇麗なお尻のシームレスヒールです。

靴の中を縫う、すくい縫いは手縫いですが、それ以降の出し縫い等の作業は主に機械による仕事ですが、随所に手仕事のエッセンスを入れていい感じに纏まった9分仕立てとなりました。

しかし、手縫いで製作すれば更にいい雰囲気が出ます。

あくまで見た目。ほぼ自己満足で、履き心地もほぼ変わりません。それでも求めてしまうのが靴好きの性ですね。取り敢えず、9分仕立て体験してみて、2足目はフルハンドで如何でしょうか?

しかし、どの分野も同じかとは思いますが、凝り出すと終わりの無い泥沼の世界ですから注意が必要ですよ。