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2017.04.21
口の開いた靴。修理屋であって交換屋になってはいけないと思う

コチラの靴は口が開いたと言う事で修理に御持ち込み頂きました。
事前に爪先補強の為にスチールを取り付けた事で爪先は防げたが、その後方の出し縫いの糸が擦り切れて口が開き出していました。


しかし、靴底の厚みは十分に残っており、ヒールも半分以上の残っている状態で交換時期でもありません。
勿論オールソール交換すれば新品の様な状態になり、何の問題も無く履ける状態になるので間違いではありません。
しかし、その紋切り型の判断に疑問を感じます。
近年のコンピューターてんこ盛りの自動車は、コンピューターで故障診断して、コンピューターがだした結果を見て部品の総取っ替えが普通になって、車屋ではなく交換屋になっていると旧車好きからは言われていますが、この靴を見て『オールソール交換ですね。』と言うのは正に交換屋。
コンピューターてんこ盛りの自動車ならコンピューターが判断した結果を信用して交換する事を否定するつもりはありませんが、コンピューター0の靴の事は状態から判断して、オールソール以外の部分修理で対応も可能な場合は、オールソール、部分修理それぞれの御見積もり、それぞれのメリット、デメリットを説明した上で、修理方法を選択頂いております。

と言う事で、今回は部分修理で御願いしますと言う事になりました。
修理方法は、スチールを取り除き、スチールの溝を新たに革で埋めて、出し縫いの糸を抜き取り、新たに出し縫いをかけ直します。これで、口は閉じます。しかし、履いて暫くすればまた出し縫いが擦り切れて口が開いてしまうので、その上にハーフラバーソールを貼って出し縫いをカバーすると言う修理です。
コチラの写真は爪先のスチールの溝を埋めて、出し縫いを抜いて、ハーフソールを貼る下処理をした上で、出し縫いがかかる溝を掘り直した所です。

先ほどの溝に出し縫いをかけ直します。

新たに出し縫いがかかった状態です。これで口は閉じて暫くは履ける状態にまで来ました。この後、ハーフラバーソールを貼って、永らく履ける状態にします。

そして、ハーフラバーソールを貼りました。この後、余分な所をカットして、削って仕上げれば完成です。


そして、問題だったソールはしっかりと閉じ、コバも、出し縫いも奇麗になって修理痕は皆無です。

また、ソールの口の開きとは別で、爪先の擦り傷も気にされていました。すり傷ですが、傷は浅く、傷補修をするまでもないと言う判断で、靴磨きで対応させて頂きます。

仕上がりはコチラです。靴磨きで全く問題ありませんね。
以上、今回の修理は爪先レザー補修¥700、出し縫い¥1800、ハーフソール¥2000、靴磨き¥500トータル¥5000也
オールソールの場合は¥10800〜と考えると半額以下に納まりました。個人店ならではの柔軟な対応で、交換屋ではなく修理屋をやってます。
修理の相談御待ちしております。
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