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こちらのオールデンの靴、とりわけ状態が悪いわけではありません。
ただ、沈み込みが激しくだんだんルーズになって、いつしかタンが足首に刺さる様にまでなってしまったとの事。
主観ですが、ソールの状態に問題が無い靴を、沈み込んだ中物交換の為にオールソール交換するのは、勿体ないなと言う気持ちがあり、インソールでのサイズ調整を提案させて頂きました。
ところが、沈み込んだ中物のコルクを沈み込みの少ない革の中物に交換して沈み込みの改善をしたいとお客様よりお願いされました。
また、この靴に入っているスチールシャンクも階段の上り下りの際にテコの原理で足の裏を突き上げて来て不快なので、同じく革のシャンクに変えて、気持ちよく履きたいとの事。
と言う事で、オールソール交換をして可能な限り靴の中から、現在の問題点の改善を図る事となりました。

早速靴をばらしました。中はこんな状態です。コルクとスチールシャンクが入っています。
では、実際にどれほど沈み込んでいるか見てみましょう。こちら接地部の中底の状態です。ウェルトが縫い付けられているリブテープあたりは空間が有りますが、接地部分は沈み込んで空間が無くなっております。

そして、こちらはシャンクが入っていた部分。

接地部とは異なり沈み込みは見られず、全体に空間が有ります。


と言う事で、リブテープの立ち上がりの高さと同厚の革で空間を埋めました。約3.5~4mm程の厚みです。
そして、こちらは革シャンクです。

6mm近い厚みが有ります。このまま詰めるとお腹がぽっこりしすぎるので、中に詰めて削って形を整えてます。


するとこんな感じに仕上がります。
前記の様にリブテープの立ち上がりは4mm近くあるので、革シャンクのウェルトの付け根あたりは、2mm程削って面を合わせ、中心部は元の厚みをキープしております。

後は通常のオールソール交換同様に作業を進めて行けば良いのですが、この靴はサイズが大きく、修理用に用意している型抜きされたソールでは長さが足りないので、サイズに合わせて切り出すことになりました。
レザーソールは天然素材のため個体差はあります。また、牛の部位によっても差はあります。
ですので、稀に左右で極端にすり減り具合が異なる靴に当たることがありませんか?
この様に同じ個体の近い部位を使う事で左右のすり減り具合を揃える事ができます。

そして、先程のソールを貼って切り回しました。
元はダブルソールでしたが、今回はシングルソールへ。
中物をレザーに変えて、硬い返りの悪い靴になるところ、シングルソールにする事で回避です。


そして、ドブを起こし、底縫いです。

そして、ドブを伏せます。


そして、つま先にスチールを。
残念ながら、このフランスのスチールは製造終了です。
国内で同等品の製造していた工場も、昨年秋に閉めて、現状在庫残すのみとなりました。
関係各所お願いして、かき集めたので一定数ストックしてます。もう暫くは対応可能です。
また、資材屋さんが代替え品を製作中との事ですのでご安心下さい。
ただ、材料原価が倍以上になりそうとの噂もあり、結果どうなるかはわかりませんが、価格維持の為、ネゴシエーターに動いて貰ってます。
元々と同じ様に化粧ネイルを打って、コバ、ヒール、ソールを磨き上げて。



アッパーも磨けば完成です。


シングルソールで、少しスマートに仕上がりました。
どの程度沈み込みが戻ってるかは着用者にしか分かりませんが、手で触る限り癖付いていた中底はフラットに近づいております。
以上、今回の修理は¥17100也。
中物には様々な種類があります。
コルク、革、スポンジ、フェルト、ココナッツファイバー、コールタール等々...。
何が良いとか悪いでは無く、それぞれ特徴、メリット、デメリットがあり、目的に合わせて使い分けされております。
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