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2011.05.06
ベベルドウェストの出し縫い。

以前ソールの加工で止まっていたベベルドウェストのご注文ですが、やっと出し縫いに入りました。
写真の本底は以前加工した物を一晩水に漬込んでふやかせた状態です。

ソールを張り合わせて、切り回し、ウェルト上面の出し縫いのアタリをウィールと言う工具で着けた所です。このギザギザの谷を一目一目手で縫っていきます。

そして、ソールの側面から包丁を入れて出し縫いの糸が納まる溝を掘りました。この作業をするのに踏まず部分のえぐりが強く、包丁の刃を入れ難いので、ソールを一晩水に漬込みふやかせておく意味合いが出てきます。

そして、今度は縫い糸を作ります。この麻糸を3本に縒りをかけて出し縫いの糸にします。3本以上であれば縒りがかかり糸になるので、4本縒りでも5本縒りでも構いません。
今回は出し縫いのピッチが細かいのでそれに合う様に、3本縒りにしています。

3本で縒った糸にチャンと言われる松脂と蜜蝋と油を煮込んで作ったワックスを塗り込みます。
チャンの割合は、松脂85%・蜜蝋10%・油5%をベースとして、気候によって割合を前後させて縫い易い固さのワックスを作っています。
そして写真が、チャンを塗り込んだ状態の糸に縫い針を付けた状態です。この針をしっかり付けないと、縫っている最中に針が外れて、出し縫いに何倍もの時間がかかってしまうので慎重になります。

準備は整いやっと縫い始めました。錐で先ほど、ウェルトの上面のウィールで着けたギザギザの谷に穴を開けます。

開けた穴を先ほど加工した糸と針で縫っていきます。今回は約2ミリピッチで縫っています。

そして縫い上がりです。この片足で約2時間程ですが、縫い終える迄手を離さ無い様にしているので、縫い出す迄の気持ち作りが大切になってきます。

機械では縫えない踏まず部分も縫っています。

そして縫い終えた踏まず部分を加工して、縫い糸が完全に見えない様にソールを巻き上げ、ぴったりとアッパーに沿わせています。

最後に開いた革を伏せてソールの形を整えれば縫い上がりです。この時もソールを濡らしておいた意味合いが出てきます。濡らす事で柔らかくなったソールを扱いて、立体的な起伏のあるグラマラスなソールの表情を作る事が出来ます。

縫い上がりはご覧の様にえぐりのきつい踏まずで、縫い目は一切見えないセクシーな靴になりました。
後日ヒールの積み上げで、全貌が見えてきます。お楽しみに。
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