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以前釣り込みが終えた状態になっておりましたu-tipですが、すくい縫いに入りました。このすくい縫いに使う縫い針ですが、何年も使っており、最近では修理で本来の使い方とは少し異なる使い方をして折ってしまったのを忘れておりました。取り敢えず、この片足はヨーロッパではスタンダードなイノシシの背中の毛を縫い針にして縫いました。縫い出してしばらくは好調に感じましたが、爪先を超えて後は内踏まずを縫えば終わりと言う辺りから、長らく使用せずに置いていた為か毛のコシが弱く縫い難さを覚える様になりました。

もう片足を快適に最後迄縫う為、縫い針を作り直します。
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縫い針の前に、ウェルトの加工もご紹介しておきたいと思います。
ウェルトはこんな感じです。牛のお腹に近い部分の革から15ミリ程度の幅で切り出した物をガラスで革のつるっとした銀面と言われる部分を削ります。

因に今回は、ウェルトを約3ミリの厚みで作っていますが、靴の特徴に応じてかんなを通して厚み調整をしたりもします。
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そしてその裏に、包丁をVの字に入れて縫い糸が納まる溝を作り、写真にある棒切れに見える工具を使って溝を適度な深さにします。
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最後に表面の一端を斜めに落とせば完成です。この斜めに落とした傾斜が、以前加工した中底の溝に納まります。
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そして、先ほど触れた縫い針の加工です。こちら写真左からすくい縫い様の錐、金針、イノシシの毛です。
イノシシの毛は柔らかくどんな角度の縫い穴にも入っていきます。先端は毛根がついており丸くつるっとしてるので、引っ掛かりも少なく縫い易いのですが、天然の物ですので個体差が有りますし、ある程度の新鮮さが無いとコシが無く縫い難い事が有ります。

ですので、すくい縫いの錐に適した加工をして強度が有り縫い易い金針を作ります。
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この金針は特殊な靴用の針ではなく、手芸屋さんで売られている布団針です。先ず、先端の尖った部分をカットします。

何故カットするかと言うと、尖っていると革の繊維に引っ掛かり、縫い難いからです。イノシシの毛で言うと、毛根を作る作業です。
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針を曲げる為にあぶります。熱くなったら両端をペンチで掴み、程よいRを作り、水で冷やします。
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そして、出来上がったのがこちら。先端の形状を錐のRに似せて曲げています。こうする事で錐で開けた穴を、通し易くなります。
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そして最後にもう一捻り。イノシシの毛根らしさを求めて、先端を目の細かい紙ヤスリで丸くし、更に研磨剤で全体を磨き抵抗を減らし、縫い易くします。最後に先端を僅か0.数ミリ捻る事で縫い易さに格段の差が出て参ります。

靴作りの道具はどれもこの針の様に、自分で使い易い様にカスタマイズしています。ですから、針1本でも折れると、一緒に心も折れます。

イノシシの毛で縫う様な快適さと耐久性を求め金針を加工しましたが、イノシシの毛が使い捨てと言う訳では有りません。良いイノシシの毛に当たると、数足はその毛で縫えます。しかし、最近はイノシシの毛の質が落ちて良い物は売っていませんので、少し手間ですが金針を加工しています。



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