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フルオーダのUチップ本日ついに出し縫いに入ります。

手縫いによる出し縫いが手間がかかると以前言っておりましたが、どのように手間がかかるのかをご紹介したいと思います。

昨日、靴から本底の型、ソールを取り切り出しました。今回は、本底を漉き加工しませんので、それほどシビアである必要は有りません。先日まで製作しておりました、ベベルドウェストの靴などではこの作業がシビアになってきます。
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切り出したソールを一晩水に漬込みました。これで柔らかくなり、縫い易くなります。また、ぬれた状態でしっかり叩いてやる事で繊維が詰まって更に丈夫なソールになります。

水に浸して寝て待ち、水気を切ってハンマーで叩くだけですが、手縫いならではの一手間がかかかっています。
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濡らして柔らかくなったソールを貼りました。
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そしてコバに合わせてソールを切りました。柔らかくなっているので非常に切り易いです。言葉通り、包丁が滑る様な感覚です。

それ故、切り過ぎもの注意も必要ですが。
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そして、今度はウィールと言う写真の工具を、ウェルトの上に押し当て転がすと、写真の様なギザがウェルトの上に出来ます。このギザが手縫いのピッチになります。

今回は1インチに8目のピッチで、1周で何目有るか数えてみると168目有りましたので、21インチの距離を縫う事になります。

21インチとは言え、表に出ている糸の直線距離が21インチなだけで、靴の中に潜っている糸の方がはるかに長く、片足縫うのに約4メートル半の糸が必要です。
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そして革を起こして、縫い糸が納まる溝を掘ります。ミシンで出し縫いをかける際は、この溝の距離を微調整しませんが、手縫いの場合出し縫い用の錐を刺して出し易い位置に溝を掘ります。

今回の場合は、内踏まずを他の場所より1ミリ内に溝を掘っています。
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そして縫い糸も加工して作ります。右の糸の固まりからを3本切り出し、縒ってナイロン針を着けます。
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あまりにも細くて解り難いですが、ナイロン針を着けました。太くなると縫っている最中に針が外れてしまうので、これぐらい細くしないといけません。このさじ加減が実は難しいんです。
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後は、根気よくウィールでついたギザの谷を錐で穴を開けては縫っての繰り返し。この靴の場合繰り返す事168回で片足完成です。仮に1つ穴を開けて、1目縫うのに30秒かかったとしたら、片足縫うのに約1時間半かかると言う事です。

手間がかかると言うのがご理解頂けますか?

ここで一つミシンで縫うのと大きな違いをご説明します。ウェルト側から縫うか、靴底から縫うかの違いです。
指で隠れてしまっていますが、錐でウェルト側から穴を開けています。こうする事で、所定の位置に出し縫いをかけることができます。

ミシンでは靴底側から縫うので、ある程度所定の位置を縫うことができますが、完璧では有りません。また、絶対にウィールで着けたギザの谷に糸を落とす事は不可能です。
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そして縫い上がり。ウェルト側から錐を入れて縫う事でこの通り。靴の輪郭をなぞる様に出し縫いかけることができました。
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そして、一目一目ギザの谷に落ちて奇麗な表情を見せます。
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最後に起こしていた革を伏せ直せば、奇麗な靴底の予感がしませんか?
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ハーフミッドソールを入れて厚みのある前足部分が男らしいですね。

しかし、ソールを水に濡らして柔らかくしても、ウェルト、ハーフミッドを入れると約10ミリの厚みが有る革を根気よく縫わないといけませんので縫い上がった時には私も汗だくで男らしい香りがしていたはずです。
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